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「弟以上、恋人未満。」    Written by; Tamaco Akitsushima

                    1 新しい日常。

 …あたしの弟は、あたしの恋人になった。
あたしの 初めての彼氏。
───…ヘンな感じだよ、まだ実感なんてない。弟だっていう実感も まだなかったのに、
どうしよう…。

 夏休みに入った朝。お父さん、お母さん、弟の累(るい)と4人で食卓に着きたくなくて、
あたしはいつまでも ぐずぐずベッドの中に居た。
「───…瑞香?そろそろ起きろよ」
うわ………っ!
いきなり累が あたしの部屋に入ってくる!
や、やめてよっ、こういうのっ!勝手に入ってこないで…!起こさなくっていいってばっ!
あたしはすかさず寝たフリ。…累はあたしのベッドの縁に 浅く腰掛ける。…あたしの肩に、
彼の手が乗る。
キャーやめてっ!目が開けられないよ…、恥ずかしくてっ。
目を閉じたまま横たわる あたしの耳元に、彼が顔を寄せる。(目を開けなくても、気配で
分かるっ。)
「………瑞香。…おはよう」
─────赤面するほど、甘い声。
…今さらだけど思うよ、恥ずかしくないのかな、こいつっ。こんな、恋愛ドラマのワンシーン
みたいに うっとりするような声でささやいて…っ。
あたし、どちらかと言えば、もうちょっと ギャグとかかましてくれるほうが好きなんだけどっ。
2の線よりは3の線のがいいよっ、ささやかれるよりは 「ウガー!」 って叫ばれて 無理やり
起こされるほうがいいよ…っ。
こんな風に優しすぎる指先で 髪とか梳かれたら、ホント 目を開けるタイミングを逃して
しまうから。
「……………………っ、」
あたしは知らず眉間に力を入れて、真っ赤な顔のまま、寝たフリを決め込んでいたと思う。
それを累に見透かされてるなんて、必死すぎて 全然気付く余裕も無く。
彼はけっこうイジワルだ。
それは やっと最近、あたしにも解かってきた。
「───…瑞香…起きろよ………」
耳たぶに触れそうな唇は あたしの脳にまで溶けそうな声を流しこんで。
それだけで、首筋が震えてしまう。
あっ…、や、やだっ、累の手、あたしの上掛けの中に忍び込んでくる…っ!
ちょっとっ、朝から何すんの…っ ?! やめて…っ、うわ、ウソ…っ!
彼の手は、あたしの寝巻きの上から 胸や脇腹をまさぐった。
あたしは どう対応していいのか分からず、更にぎゅっと目を閉じたまま、彼が悪ふざけを
やめてくれるのを 辛抱強く 耐えなければならなくなっちゃった。
「─────………。」
息がつまりそう。
目を閉じているせいで、余計に彼の熱とか、触れてくる指先の感じとかが 誇張される。
うー、困った。
あたし、ホントは こういうのってかなり苦手だっ。
…この前の夜、初めて彼の部屋に入った。…朝まで2人きりで過ごした。
その次の夜も、両親が居なかったから 彼の部屋で一緒に眠った。
───…多分、彼のエッチは すごく上手い。ううん、ホントは上手いかどうかなんて、
初めてだったので判らないんだけど………。とにかく、ワカや、クラスの経験済みな女の子
達から聞いていた話とは、かなり違ってた。
とにかく 同世代の男の子は酷い、って。ガッついてくるし、こっちの事まで気遣ってくれる
余裕ないし、慣らすって事を知らなくて いきなり来るから超痛いよ、って。
だからワカは、年上の男の人としか付き合わない主義なんだって。
それ以外にも、「どうしてもナマでなきゃイヤだって言われる」 とか 「キスも無し、いきなり
突っ込み」 とか、「ベッドじゃなくフローリングの上でされて 肩や背中が痛くてバキバキ」 とか
そりゃもう酷い話のオンパレードで、そうでなければ、相手も初めてで 「まだ何もしてないの
に 相手が緊張のあまり 一人イッちゃった」 とか 「ヒワイな事いっぱい言ってくる、アダルト
ビデオの観すぎっ!」 とか…夢を壊すようなエピソードばかり。
現実なんて、そんなもんだよ、と。…初めてなんて痛いばっかりで、出血も止まらなくって、
ロマンティックな雰囲気のカケラもなくって、全然気持ちよくないよ、って。
「…つまり瑞香、あれはもう プロレスの世界だと思ったほうがいいかもね」
これは、彼女たちの一致した意見と 最終結論。お金ない、車ない、テクがない。…だか
ら、同世代の彼氏は持たない。
─────…あたしは 聞きながら思った。
そんな事より、愛があるか無いかのほうが 大切じゃない?
それにあたし、逆に やたらドラマや映画の世界のようなマジメなエッチのほうが 耐え切れ
ないよ…っ。
それなら、相撲かプロレスに近いほうがいいよっ。
ふざけて笑って、その延長線にあるような 冗談めいたじゃれあいのほうがマシ。真剣な
眼差しで熱く見つめられるほうが、どうしていいのか判らなくって、逃げ出したくなるよ…!

 人生って、思惑通りにいかない。
王子様を夢見る友人のミドリのところに 王子様は来ず、王子様よりも クラスのガキ大将
でいいはずだった あたしのところに、王子が来る。(まぁ、したたかなニセ王子だけどねっ、
累は!)
…泣きたくなるほど、嬉しかったけど。累があたしを 好きだと言ってくれた時。
だけど─────…。
人を好きになる気持ちって、自分じゃ コントロールが効かない。…こんなはずじゃなかった
のになぁ…。累って全然 あたしのタイプじゃないのになぁ、何で あたし、累を好きになっ
ちゃったんだろう ?! あたし、クラスを爆笑の渦に陥れるような、ワイルドで ひょうきんで、
勉強がダメでも ケンカやゲームでは誰にも負けない、そんな感じの目立つタイプの男の子
が 好きだったはずなのになぁ。…今まで片想いしてた男の子達って、そんな感じの路線
だったのになぁ。
累は まるで違うんだよ?…勉強出来て、大人びてて そつながくってスマートで…。いつも
穏やかで、冗談で人を笑わせない代わりに、歯の浮くようなセリフを 恥ずかしげも無く言っ
ちゃえる。
…あまりにも うっとり夢見る表情で 瞳の奥を覗き込んでくるから、あたしは術を掛けられた
ように、もう動けなくなる。
「─────…瑞香…、そろそろ起きろよ…じゃないと…」
え ?! 『じゃないと』 ?!
わ!きゃーっ!
「………ッ!っんッ、」
彼の舌先が 耳たぶを掠めた。…手は、あたしの太腿にまで降りる。
思わず声を上げそうになって、寸でのところで堪えた。
クソっ…累のやつ…っ!けっこうエッチだよねっ、見かけによらずっ。
…すぐに触ってくるんだからぁ!
あたしの身体を サワサワ這い回る指。
それも すごくソフトに。
余裕を失くした手じゃなく、余裕のありすぎる手なのが 癪に障る。
そのまま意地になるみたいに硬く目を閉じていると、手はキャミソールの裾から、直接 肌
にも触れてきた。
「……………っ、」
どこをどうすれば あたしの身体に火が付くのか、この指はきっともう、この数日間で 知り尽く
している。
だから面白がるように 巧みに、アッという間に あたしの体温を上げてゆく。
たった数日前まで こんな感覚、知らなかった。
あたしは悔しい事に、累のテクに慣らされちゃったかもしれない。

目をきつく閉じていても、熱を持つ こめかみや眉間の内側、目が回りそう…!
「───…、………ん、ゃっ…、」
やめてってば…っ!
心の中で 何度も祈るように懇願する。…だけど皮肉なほどに 手は、明確な意思を持っ
て あたしを焚き付けようと 面白がってくる。
あたしの意識は もう、完全に覚醒してた。…頭の芯が、一気に引き絞られるような感じ。
や…っ、やだぁ、胸をまさぐって来た手が、持ち上げるようにして 揉みしだいてくる。
悔しいながら………、例えようもなく甘美だ。
彼の手のひらは、堪能するように ソフトに触れる。…それがまた、もっと がさつで男の子っ
ぽかったら耐えられるのに、そうじゃなくって、妙に焦らすようにゆっくりだから、余計に羞恥を
あおられる。
時折、すごく感じるところを 指先が掠めてゆくから、そのたび、肌はザワめきたった。
鳥肌が立つような快感。思わず ため息がもれそうになって、息を飲む。肩に力を入れて、
身動ぎしないように気を張る。…きっと 知らず知らず、あたしの眉間には立てジワが寄って
いて、難しい事でも考えてる時みたいに しかめっ面してたと思うんだけど、そんなところに
まで あたしはやっぱり到底 気が回らない。(…考えてみれば 眉間に立てジワ入れて眠る
人なんて居ないっつうの!)
「…瑞香………、起きてる………?」
知ってて こんな問いをそっと投げ掛ける弟。───…ワザとなんだから、すっごくイジワル
だっ。
あたしはもちろん、ここで目を開けるわけにもいかないから、ますます寝たフリの演技に集中
しなければならなかった。
累の指が…っ。前触れもなく、いきなり あたしの胸の立ち上がったそこを ギュッと摘んだ。
「…ッ!」
ヤバ、声を上げるところだった…!
やんっ、もう離して欲しい…っ、耐えられないよ…っ、顔が熱いよ、…別の箇所も熱を孕み
出して───…マジにヤバいってば…!
だけど彼の手は、そこばかりを執拗に弄んできて、やっと離れてくれたと思ったら、おもむろに
脇腹を撫で上げられるから、今度こそあたしは ほんの少し、声をあげてしまった。
「 あ、 」
しまったよ…っ、バレた… ?! 目が覚めてる事…っ。(ホントはとっくに 彼にはバレてた。
あたしだけが必死で、気付かれてないと思って 要らぬ努力をしていた。)
さっきから、小さなザワめきは 徐々に波のようなうねりを上げて、まるで身体に電流を流さ
れたみたいになっている。
絶対に動かないように、って こんなに肩に力入れて頑張ってるのに、時折 背筋がビクンと
跳ねる。
………ヤバ、これ以上 こんな事続けられたら………、あたし………っ。
太腿の辺りまでが ゾクゾクと高揚し始めていて、身体の芯は 間違いなく反応し始めて
いて…。
どうしよう、このまま寝たフリも苦しくなってきた。だって───…、けっこうキワどいところまで
快感の水位が上がってきてて───…、あたし多分、今すぐ止めてもらわないと、累の手
を振り払わないと、もう ダメだっ…!
「やめ………っ、」
彼の手を止めようとして、同時に 手首を捉まれていた。
「…ッ!累、」
仰向かされて、両手首を シーツに縫い付けられる。
彼は高速の早業で 左の膝をベッドの縁に掛けると、あたしの右腕を押さえ込んだ。もう
片方の左手首は、頭上で彼に 今も繋がれたまま。
目が合うと、形容しようのないような勝者の目をして、彼は涼しく微笑んだ。
実はもう、あたしの下肢は 今にも下着を濡らしてしまいそうなほど熱く目覚めていた。
「─────…大丈夫、朝からしないって」
何よ、そのクスクス微笑い…っ!
「………もうしてるじゃん…、」
焦るあまり上ずってしまっている、自分の声。…悔しいっ、何か怯えてるみたいじゃんっ。
だけど実際、あたしは 余裕なんてどこかに失くし、ホントに怯えていた。
「───…や、…あっ!」
思わず小さく叫ぶ。彼の右手が、あたしのショートパンツごと、下着の中へ潜り込む。
中で彼の指が、もう溢れ出しそうなそこを探り当て、面白がるように触れてくる。
「ゃ、っぁ、」
もっと大きな声で反抗したかったけど、階下にまで聞こえたら どうしよう、って思うと、声は
出せなかった。…もちろん冷静に考えたら、もしも仮に、この部屋のドアごしに ダイニングに
立つ母に向かって 力の限り叫んだとしても、ようやっと声は届くか届かないか、そんな距離
なんだけれど。…すでに冷静じゃなくなっている頭と、どこか後ろめたい事をしているような
焦りが、あたしから正確な判断力を とうに奪っていた。
「…あれ、瑞香、…けっこうエッチじゃん…」
2本の指先で 入り口を両側に開かれると、堰を切って溢れ出した熱い体液は 彼の指に
まで滴った。
死にたいほどの羞恥が また、首から脳天までを一気に襲う。
膝を閉じて 彼の手を追いやろうと頑張る。
「………累のッ…せいで…、」
「─────…え…?何…?オレのせいで…?」
「そうだよっ、累のせいじゃん、───…アッ、やっ、やめてっ!」
「…それは嬉しいな…」
また微笑う…っ!…ムカつくーっ!
両手の自由を奪われているから あたしは脚で抵抗するしかない。…だけど みぞおちに
力が入ってくれなくて、もぞもぞと両膝をこすり合わせる事くらいしか出来なくて。…それは
どうやら、見下ろしている累にすれば、ただ よがってるようにしか見えてなかったと思う。
…だけどもちろん、今のあたしには そんな事、気付けるワケもない。
入り口から 彼の指先が ほんの僅か忍び込む。…ぬめりを帯びたその指先は、そのまま
周辺の窪みや、入り口の手前にも滑り込んできて、巧みにあたしを誘う。
「やァ、…もう、………やだぁ、」
いくどもイヤイヤをするみたいに、首を横に振って 訴えた。
やめて欲しい。…でも、もっとして欲しい。…あぁでも やっぱり…やめてくれないと、気に
なる…っ、朝食の時間でしょ、今っ…!
「───…お、母さんに、呼ばれて…っ、お、起こ、しに来たんじゃっ…、ないの、…?」
「…そうだよ?」
「だったらっ!…あ、ァ…ん、」
「─────…なんだよ?」
「やめて…よっ、」
彼は あたしの寄せられている眉を見て、殊更 微笑みを深くする。…クスッと微笑ったかと
思うと、その忍び笑いを押し殺す。…さっきから そのたび、すっごくムカ付くんだけど…っ!
「…やめていいの…?」
まるで今のあたしは彼の、周到に張りめぐらせた蜘蛛の巣に捉われた 獲物みたいだ…っ。
もうっ!ジワジワ周囲から 生殺しにするみたいに…っ!
「やめて…、やめてよ…う、」
恥ずかしすぎた。明るい夏の日差しは、窓辺の 淡いピンク色したギンガムチェックのカー
テンを透かして、このシーツにまで まっすぐ斜めに届いている。
「…ゃんっ!」
もう彼の指のせいで 硬く主張していた入り口手前のそこを、何度か親指の腹でこすられ
て、耐え切れず 喉元を逸らしてしまった。
背筋を突っ張って耐えていないと、もっと電流は大きく波打って あたしを飲み込むと思う。
小刻みに震えるみぞおち、ふくらはぎ。…力入れすぎてる、肩。
…あぁダメだ、恥ずかしいほどに 中は体温を上げ、周辺をジラすように掠めてくる 彼の
指先のせいで いいように振り回されている。あたしの思考は いくら『やめて!』と懇願して
も、裏腹な身体は 彼の指に歓びを伝えてしまう。もっと、って言ってる。
あたしは これ以上彼に何か からかいの言葉を投げ掛けられる前に、慌てて言い訳を
口走っていた。
「累の…っせいだから…っ!…あ、あたしのせいじゃないから…っ!」
「え?…こんなになってるのが?」
幾度も頷く。
「そ、うだよ…っ、も、…朝から…っ」
「─────…したくなっちゃった?」
「バカぁ…っ」
泣きそうになった。よくもそんなセリフを 臆面もなく 人のカオ覗き込んで…っ!
「あっ…!」
そう思っていたら、いきなり彼の顔は あたしの胸元に落ちて、ふいに生温かい変な感覚が
襲ってきた。
「やんっ!」
彼が あたしの寝巻きやキャミソールごと、生地の上から 胸の突起を噛んでくる。
…右手の人差し指と中指は、いつの間にか下肢の付け根から あたしの中にスルリと差し
入れられていた。
「…ぃやっ、ヤっ、やだ、」
本気で焦って、必死で抗う。
だけどやっぱり、どうしようもなく 甘い痺れの波は どんどんあたしを浸食していき、溺れる
寸前。
反対側の乳首も甘噛みされた。…挿入された指は、ゆっくりと引き抜かれ、またゆっくりと
最奥まで 忍び込んでくる。
「…っ、ンっ、…ッァ!…あ、あ…、ァ…」
ダメ…!どんどん高みへさらわれる。どんどん加速してゆく…!
歯を立てられる、胸のそこ。
「累…っ、の、せいだから…っ、…ア…っ、は…ァ、アッ、ア、」
「─────…それ、すっごい誘い文句だよな…解かってて言ってんの?」
「えっ…、何…っ…、」
「………オレのせいで、簡単に…こんなになっちゃうんだろ…、」
「何 言って、んのっ!───…アッ!や、やだ、ダメ…っ!」
「…ちょっと刺激したら、すぐに感じちゃうんだ…」
「そん、な事…っ!言ってない、…っ!」
「…この程度で濡れちゃうんだ───…、」
「やだッ、やめ…ッ…、ア、…ア、アァ…、」
「違うの…?じゃあ オレでなくても、こんなになる…?」
─────何、そのセリフ…っ!自信家…っ!
「も…やめ、てよ、…ォ、…お願い、…ッ、だから…」
彼はあたしをもう それ以上ジラす事はなく、代わりに甘く追い詰めて、指先だけであたしを
イかせた。
「─────…ッ、……………」
一気に脱力。
肩で浅い呼吸を繰り返す あたしの手首を、ようやく 彼は解放してくれた。
「…キャッ!」
やっと離れてくれて ホッとしたのも束の間、いきなりショートパンツを 下着ごと引き降ろされ
る。
「ウソッ!」
慌ててそこを隠そうとする あたし。
「ヤだからっ…!朝っぱらから…っ、お母さんたち ヘンに思うって絶対ッ!」
あたしは必死で 彼に懇願していた。
「……………………。」
目を丸くしていた累は、1秒後、また あの何とも言えない人の気持ちを逆なでするような
忍び笑いを漏らすと、「しないって。」 とだけ告げた。
「えっ…?」
「どうせ着替えるんだから、と思って…そのまま降ろしただけ」
「 … ?! 」
彼が デスクの横にあるティッシュボックスに手を伸ばすと、あたしの下肢の付け根を 綺麗に
しようとしてくる。
「いいったらっ!やめてよッ、スケベッ!」
起き上がっていたあたしは ティッシュを彼の手から引ったくり、真っ赤な顔で抗議していた。
「………っ!」
キスを盗まれる。…コンマ1秒、目にも留まらぬ速さッ!
「─────…続きは今夜な?」
「─────………っ…。」
もう、何も言い返せない。鮮やかすぎるよ…っ、弟…!
ベッドの上に膝を抱えてうなだれると、どっと疲れが襲ってきて、先が思いやられた。
「…くっそう…、累のやつ…っ」
ちょびっとだけ、目尻に涙が滲んだ。…イニシアチブ握られっぱなしなのが 悔しくて。

 夏休み。累は、朝から 水泳部の練習に行く。
3年生最後の大会が、もうすぐ。…彼は 我が校期待の主力選手。
毎日泳いでるから当たり前だけれど、彼は陽に灼けた肌が すっごく強烈に夏っぽい印象
で、春までの彼とは 全然違う。
すごくソフトな雰囲気を持っているから、普段の彼からは、あまり男っぽさを感じない。間違
っても ワイルドなタイプじゃなくって、どちらかと言えば、上品なおぼっちゃんって雰囲気。
…だけど、この頃の累は違う。
きっと、大会が 日に日に迫ってきていて、彼の内面も その時に向かって照準を合わせ
始めていて─────…。だから、息を止めて獲物を狙うハンターみたいな眼差しに
なっている。灼けた肌も、今の そんな雰囲気を纏った彼には サイコーに似合っている。
…あたしは その強い眼差しだけで、ハートを ショットガンで打ち抜かれたみたいに、KO
されてしまう。
…彼の 真剣な横顔を見ただけで、身体の芯に 火がつけられる。

あたし、やっぱり ヘンかも知れない…。
彼とエッチしてから、いきなり モードチェンジしてしまった、あたしの身体。…他の人とした
事ないから、誰に対しても そうなるのかは分からない。…きっとそんな事ないって思う。
…だけど 累に関してだけは─────…。あたし、異常かも知れない。それくらい、
あたしの全身は 沸き立つように彼を求めて たちまち熱くなる。

あたしは自分を どこかに置き忘れて、代わりに 累を手に入れたみたいだ。
今のあたし、何だって出来てしまいそう。
…例えば 彼のために人を殺さなきゃならないとしたら。
今のあたしなら、やりかねない。…ううん、きっと やれちゃうと思う。

それくらい、彼に溺れてしまってた。
★甘栗のちゃちゃ。
ちいちゃん:さて、第一回だねーっ!いやー、イジワルだねーっ
ユキ:桶川さん、他人の事言えるんですか?(^_^;)
ちいちゃん:いや、愛があれば許されるのさ、こういうのもっ。
ユキ:うーーーーんっ、そうなのかぁ?とりあえず次回を見守るとしようっ。

「弟以上、恋人未満。」−1    Written by; Tamaco Akitsushima